新井君と佐伯先生

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 行き慣れた国語科準備室も、外から回ってくるのは久しぶりな気がする。1,2年生は居ないせいか、静かな中進んでいけば目的の教室まではすぐだ。初めてねこ太と出会ったあの場所で、今日もねこ太はひなたぼっこをして丸くなってた。 「お、ねこ太。俺、今日で卒業なんだ。お前と会うのもこれで最後だな」  ぐしゃぐしゃにしながら撫でても、目をつぶったまま大人しくされていた。気が済むまで触りまくり、撫でるのを止めたら、顔の周りの毛が逆立って不細工な顔になっていた。まあ、こいつ元々ぶさ可愛い感じだしこれぐらいがちょうどいいか。  毛並みを整えるように毛繕いを始めたねこ太の前から立ち上がって、準備室の前に向かう。カーテンが閉められてて、電気がつけられてないせいか暗い。居ないのかって思ったけど、窓が少しだけ開けられてた。閉め忘れか…?戸締まりしっかりしてるはずの佐伯だけど…居ないなら仕方ないか。  窓だけ閉めて帰ってやろうと近づくと、中から小さく音がしてるのが聞こえた。あれ?やっぱり居る? 「ふ…っ、ん…ッ」  にちゅって言う…水音っぽい?音と、なんかを堪えるような声。  呼吸が乱れてる感じがするけど、具合悪いのか…?けど、何故だか気軽に声がかけれなくて、物音を立てないようにして開いてた窓を更に少しだけ開けて、カーテンの端を掴む。 「らい…!ぁ、らい…!」     
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