新井君と佐伯先生

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 十分出遅れただけで、売店の品物はほとんど売り切れ。鮭とツナのおにぎりと沢庵が詰められてるパックみたいなのが残ってたから、それと温かいお茶を買うと、売店を出た。さすがに教室には戻りたくない…一人になれそうな所を探して外へ出る。  秋も終わりそうな10月中頃、外の空気はなかなかに冷たかった。外に出たのを若干後悔しつつも足を進めると、普段は来ない裏側の方までやってきた。特別棟のそこは、校内ですら人が少ない。そんなのの外なんて、人がいるわけもない。  一階の廊下突き当たり、非常口にあたる扉の前に、コンクリで作られた段差を発見。しかも日当たりも良好。そこへ狙いを定めた俺は、迷い無く段差へと座り込んだ。  風は冷たいけど、日が当たってりゃまだ平気そうだ。さっき買ったおにぎりを取り出し、適当にラップを破る。 「いただきます」  一個を手にとってかぶり付く。まだ具材には届かなくって味気ない味だ。ぼんやりと目の前を眺めながら食べていたら、突然茂みから音がした。  驚いて、動きが止まる。そんな俺を知ってか知らずか…茂みは音を立てながら動き、最後には猫が顔を出してきた。 「え…野良猫か?」  呆然とする俺を前に、猫は堂々とした足取りで茂みから出てくると、俺の横へと座り込んだ。さも当然みたいな顔をされてるけど、猫なんて数える程度しか触ったことの無い俺にとっては大事件だ。え?ええ??これ普通なの?猫ってこんなもんなの…?     
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