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がっつく野良猫に話しかけても仕方ないんだけど、俺の声に反応して顔を上げた猫は、すぐに飯を食うことを再開させる。なんか可愛げあるじゃん…茶色の体は汚れて汚らしいけど、自然と愛着がわいた。手に持ってた残りも一口にちぎって追加してやる。
「いっぱい食えよ」
俺も余ってたツナの方をかじり付く。日向で食べる猫との昼飯は、温かいけどうるさい教室で食う飯と比べものにならない程、美味かった。
◆
「担任の小野田先生ですが、昨日事故に遭われ入院しました。そのため、本日より臨時で私が2組の担当をする事となりました。よろしくお願いします」
朝、HRで現れた古典の佐伯が言い放った言葉に、絶望しかない。
タダでさえ嫌いな先生なのに、担当授業以外に朝と帰りも顔を見なきゃいけないのかよ…。佐伯曰く、小野田は卒業式前には戻ってこれるらしいけど…その頃は俺たちだって授業が無くなって、学校にくる必要ないじゃん。それまでは毎日佐伯と顔を合わせなきゃいけなくなると思うと、気が滅入る…。
一気にざわめく教室の中で、ため息をついた俺が何気なく黒板を見ると、佐伯の小さな瞳と目が合う。驚いて固まる俺を見て、佐伯はフっと視線を逸らした。
な、なんだったんだ、今の…目が合うなんて事初めてで、吃驚した…
「この時期に交代とかあり得ないよなぁ、ねこ太~」
11月に入って、寒くなっても俺の昼飯は特別棟の外の日向だった。
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