128人が本棚に入れています
本棚に追加
あの日初めて出会った茶色の汚い野良猫は、次の日からも毎日あそこに現れた。それから、俺の昼飯を無言で強請る。初めのうちは食ってたのをちぎってやってたんだけど、人間の食い物をやり続けるのも体に悪いかと思い、給料日に思い切ってキャットフードを買った。
小分けにして持ってきて、昼飯がてら猫にやる。そのうち、土日はどうしてんのかと心配になり、金曜の放課後はそこに少し多めの餌を置いとくようになった。
そしたら、月曜に綺麗になくなってる。鳥に食われたのか掃除されたのかは知らんけど、野良猫は元気そうだからこれからも続けようと決めた。
「しかもあの佐伯だぜ。あいつ絶対俺のこと嫌いだって」
「なーん」
「小野田がやるっつってた来週の個人面談、そのまま続行するとか最悪。佐伯とすんだぜ?俺もう就職決まってんのに…今更話す事もなくね?」
「なーん」
「聞いてんのか?ねこ太」
キャットフードを食べ終わったのか、ペロペロと口の周りを掃除していたねこ太(勝手に名前つけた)は俺の方へとやってくると、あぐらの間に入り込む。そのまま欠伸をして、丸くなり始めやがった。
図々しい態度に呆然とするが、懐いてくれた事は正直嬉しい。チョコチップメロンパンを頬張りながら撫でてやると、気持ちよさそうにしていた。
「あのロボット男も、おまえみたいに可愛げあったらいいのにな~」
「なーん」
◆
最初のコメントを投稿しよう!