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君は完璧に近かった。
人間よりも神様に近いんじゃないかとすら思えた。
そのくせ決して一番になろうとなんてしなかった。
いつも僕に前を譲って、一歩後ろで笑っていた。
些細なことだって僕は誰より優位でいたかった。
そんなプライドの高い僕は、君が手を抜いてくれているだなんて認められなかった。
いや、正確には少し違う。僕が勝てない試合は挑まれなかったし、僕が勝ったらそれで終了。そんな勝負ばかりしていたから、僕は前を歩くことが出来ていたのだ。
みんな僕らのことをわかってなんかいない。依存なんかじゃない、平等だ、"相棒"なんだ。
そう思っていた。
けれど君は否定しなかったし、周りも理解しようとなんてしなかった。
君はいつも僕を褒めて、なぜだか誇らしげにしていた。
それを僕は当たり前だと思っていたし、けれど他の人の言葉よりもずっと心地好かった。
僕が君のことを褒めたのなんて、いったい何度あるだろう。
きっとすごく嬉しいことがあったとき、何もかもに絶望していた時。
鏡に向かうように言われたいことを吐いただけだろう。
自己満足ですらない汚い言葉を君は、まるで宝物でも見つけたかのように目を輝かせていた記憶がある。
あまりまともじゃなかった僕は何も思うことはなかったけれど、思い出してみれば人生で一番酷いことをした瞬間だった気がする。
けれど、自分よりも上だと認識している人を褒めるなんて、普通の僕にはとても難しかった。
認めることは、僕の心を抉ることだから。
今思えば少し上からの褒め言葉だったのかもしれない。
我が儘でプライドが高くて、他の子よりも優れている我が子を誇るような感情。
自分が負けることが当たり前な関係。君はそういう気持ちで僕と過ごしていたのだろうか。
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