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離れるまでは君がいることが必然だったし、君がいない世界なんて想像もしなかった。どんなときだって、それがずっと先の未来だって続くと思っていた。
だからこそ君がいなきゃダメだなんて思ったことはなかったし、一人で生きていけるとすら考えていた。
いつだって、君ありきの僕。
そう気が付くために君は離れていったのだろうか。
そんな君は僕がいなくても平気なのだろうか。
そう考えるだけで、悔しいとか悲しいとか、そんな感情よりもずっと虚無感が広がる。
僕らは"相棒"だったんじゃないのか。友達なんかよりもずっと深くて、一つではないけれど二つよりもっと小さい、そんな存在じゃなかったのか。
僕よりも選びたいものが出来たと言って、去って行った背中。
君は一つをまるまる置いて、本当に必要だったところをすべて持って行ってしまった。
残された僕は本来の姿に戻っただけなのだろうか。
一つ、最後の我が儘。
僕を忘れないでくれ。君の中にずっと居座らせてくれ。
ほんの少しなんて嫌だ。そうだな、いつだって片隅どころか真ん中を占めて、一時も思い出さないことなんてないくらいがちょうどいい。
僕が消えてしまうなんて、きっと君が死んでしまうくらい辛いんだ。
けれど僕は、君が置いていった一つ分にもう入るところなんてないから。
何かを捨て去る勇気のない僕を許してほしい。
今残るこの記憶が最後だ。
きっと隅っこに追いやられ、ぐちゃぐちゃに混ざって、過去に流れて行ってしまったとしても。
君が覚えていてくれて、また出会うなんてことがあったら、きっと欠片を救い出してまた一つ以上になれるはずだから。
君はずっとずっと、そんな未来の事だって心に刻み付けていて欲しい。
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