【第1話】マキ

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【第1話】マキ

「おい!健太(けんた)、今週の金曜日ひま?」 俺はとある企業で働いている健太、24歳、彼女なし。今声をかけてきたのは同僚のシンジだ。 金曜の夜のお誘い、多分合コンだろう。シンジと俺はよく合コンに出かけていた。シンジは気さくで女の子にも慣れている。多分、彼女はたくさんいる。そういう奴。 俺? 俺は、彼女は死ぬほど欲しいが、彼女いない歴年齢と等しい男。シンジが言うには俺は見た目はいいほうだが、奥手すぎるらしい。合コンには頭数合わせで誘ってくれるわけだ。 「ひまー。」 と俺が答えたとき、コトンと俺のデスクの横に置いてあったくずかごが転がる音がした。 「あ、すみません・・・」倒してしまったくずかごを拾いながら、消え入りそうな小さな声で謝ったのは清掃員の人・・・ 見慣れない若い女の子だった。 (あれ、いつもの掃除のおばちゃんじゃない・・・そっか、今日から2月。 清掃員も交代したか。) 俺は床に転がったガムの包み紙を拾うのを手伝おうとして、その女の子と目が合ってはっとした。 めっちゃ美人だった。 「ありがとうございます。」とお辞儀する伏し目がちで品のいい一重まぶたが印象的だった。 名札がよく見えなかったが、 たしか なんとか真喜、 「マキ」とかいてあった。 「あのこ、美人だねー。新人かな。 お、今日から2月か。 バレンタインデーの季節ですなぁ。な、健太?」 バレンタイン。モテ男のシンジにとっては意味のある季節がやってきたわけだ。 今年も俺は義理チョコもらって、義務的に何倍か返しのホワイトデーのお返しを買うわけだ。と憂鬱になる。もはやバレンタインデーもホワイトデーも俺にとっては、ただの出費デー。 2月1日水曜日の出来事。
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