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【第6話】バレンタインデー
2月14日火曜日。夕方。
会社の女の子たちが「義理チョコ」をばらまきにやってきた。
今日に限って、レイコのやつ、ツンデレかよ。会おうって連絡も来ない。
俺から連絡しようか。やきもきしていた。
いつもの時間になった。
騒がしいオフィスに、静かに マキさんがやってきて、手際よくモップをかけてゆく。
そして
マジか。
「あの、ちょっとだけいいですか?」
声をかけられ、一緒に廊下に出た。
マジか。
マキさんは紙袋を持ってすぐに戻ってきた。
色白な頬を少し赤く染めて、目を合わせずに。チョンとその袋を俺に差し出した。
「いつもお仕事おつかれさまです。」
マジか。
袋の中に、手紙らしきものが見えた瞬間、俺は思った。
義理じゃない。マジ本命チョコ!?
「あ、あふ、ありがとう。」噛んでしまった。
「わかってます。」
と悲しそうに言われた。
「え?」
「分かってます。健太さんに彼女がいることは。でも、受け取って欲しいんです。」
マジかああああ!まさかのこんなドラマみたいな展開とか、俺には贅沢すぎる!
と舞い上がりかけて、ドキッとした。
「必ず、家であけてくださいね。」と言うマキさんの目が少し鋭かったからだ。
てか、マキさん、レイコの存在を感づいてるとか、女子ってすげー。
マキさんは再びモップを持って別の部屋へ消えていった。
その時、俺のスマホが震えた。
レイコだ!
今夜、レイコが家にくることになった。
俺の心は揺れた。
ずるい俺はレイコがくる前にこっそりと、マキさんの手紙ともちろんチョコも家でチェックしようと決めた。
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