2・地下室

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「……そっか。じゃ、やるぞ」  アウィスの合図に従い、ムッカとルーヴはまっすぐ立つ。両手を軽く広げ目を瞑る二人を確認し、アウィスも同様にした。 「我は風」  アウィスが言い、ムッカとルーヴが唱和する。次にムッカが「我は幻影」と唱え、アウィスとルーヴが続く。  アウィスには茶色の、ムッカには緑の、そしてルーヴには水色の光る粒子がそれぞれの体を包んだ。 「我は大地」 「我は虫」 「我は星空」  すらすらと唱える三人。そして12番目に「我はーー無」とルーヴが言葉にする。と同時に、三人は左足で地面を叩いた。  すると驚いた事に、その左足からみるみる透明になっていく。やがて全身に広がり、完全に周囲の闇と同化した。  陰魔法の成功だ。 「うまくいったな!」 「だから静かにしろ」 「声は隠せないもんね」  互いに見えない中、声だけが飛び交う。透明の三人は、そうして堂々と校庭を横切った。足跡を残しながら。 「ていうか……どうやって学校入る?」 「心配すんなよ。この日の為に図書室の窓の鍵ぶっ壊してる」  訊ねるルーヴにドヤ声のムッカ。相手にするのも面倒なアウィスは「そうか、図書室に行こう」と素っ気ない。  「誉めろよぉ……」とムッカの寂しげな声が宙に響いた。
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