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「リー兄さんは私たちを育てる為に毎日一生懸命仕事してくれてるんだよ。この村では学校の先生である兄さんの立場も少しは考えて。せっかくあんたは優秀なのに」
「……嬉しくないよ。それに、カペル姉の方がよっぽど優秀だよ。俺の居場所いつもすぐに見付けるし」
「あんたの行動パターンを読んでるだけよ。リー兄さんは頭いいけど、ちょっとその………ニブイとこあるから」
「だいぶ言葉を選んだね」
ルーヴはカペルの座る長椅子に向かい、空いているスペースにごろりと寝転ぶ。カペルは半身を捻り「疲れたんでしょー?」とルーヴの頬をつついた。
「やめてよ眠い」
「ルーヴ、あんたのしてる事は時間と体力の無駄よ。今だって超簡単な浮遊魔法で飛んでくれば一瞬なのに、わざわざ筋力使って上ってくるとか。外梯子まで自分で用意して……便利なものを敢えて使わないなんてバカみたい」
「いーよ、バカで」
「ほんとにもう……あんたは皆から将来を期待されてる魔法使いだってのに。どうしてそんなに魔法が嫌いなの?」
僅かな沈黙。そしてルーヴは徐に「うーん、なんかちょっと」と寝返りを打った。
会話を終わらせたいのだと悟ったカペルは溜め息を吐く。長い髪を跳ねさせ立ち上がると、風を身に纏わせた。
「じゃ……あたし行くね。あんたも遅くならない内に帰ってくるのよ。リー兄さんには上手く言っといてあげるから」
ふわりと浮くカペルの体に沿って金色の粒子が光る。
「まあ、そう言ってもリー兄さんの怒りは長くは持たないけどね。甘えるのも程々にしなさいよ。……まったく、素直じゃないんだら」
そう告げるとカペルは塔を後にした。
ルーヴはもそもそと起き上がる。姉が残した風が小さな竜巻となって去るのを一瞥し、「なんかちょっと」と呟いた。
「違和感があるんだ……」
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