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普段リアクションに乏しいルーヴも、これには瞠目する。「マジか……」と口にすると「マジだ」とムッカはニヤリとする。
村には、主に魔法を学ぶ唯一の学校がある。ルーヴたちも通っているその学校には地下室があり、そこには何かとんでもない物があるらしい。
『らしい』というのは噂だからだ。生徒はおろか教師ですら地下室に近付く事は固く禁じられている。そこに入れるのは地下室への鍵を持つ校長と、同じく所持する村長だけだ。そしてムッカは、その村長の息子なのである。
好奇心の強い少年ら三人は以前からどうしても秘密の地下室に入ってみたくて、鍵を何とか入手出来ないかと機会を窺っていた。その機会がようやく本日、巡ってきたのである。
「父ちゃん、今日の昼から隣の村まで懇談会に行ってんだ。明日まで帰ってこねぇから今日の夜がチャンスだぜ」
「しかしお前、よく鍵の在り処が分かったな。親父さん隠してたんだろ?」
アウィスが冷静に訊くとムッカはふふんと鼻を鳴らす。
「俺をなめんなよ! 伊達に影魔法と破魔をマスターしてねえからな!」
「そういえばお前、それだけめちゃ頑張ってたな……」
「でも、そのお陰で地下室に入れる……!」
影魔法は探査魔法の一種で、破魔は結界を破る魔法だ。冷めた目をするアウィスとは対照的にルーヴは目を輝かせる。
いつもどこか達観しているルーヴのそんな表情は珍しくて、ムッカとアウィスは顔を見合わせてこっそり笑った。
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