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「じゃ今日の真夜中、現地集合な! 上手く家抜け出して来いよ? 持ってくるものは」
「貴様ら何をしている!」
突然の迫力ある声に三人はビクリとする。恐々振り返ると、長身で銀髪の眼鏡の男性が子供たちを見据えていた。「な、ナハシュ先生……」とムッカがアワアワ言う。
そう、彼は学校の教師である。リーの同僚でもある彼の歳は30前後、名はナハシュ・セルペンテ。気難しく厳格な性格で、生徒たちからは敬遠されている。「……起立」という低い声に子供ら三人は反射的に立ち上がった。
「もう一度訊ねる。こんな所でコソコソと何をしていた」と凄むナハシュにアウィスが顔色ひとつ変えず口を開く。
「次の学科試験の対策を練っていました」
「こんな所でか?」
「前の試験の点数も言い合ってたんです。さすがに公衆の面前では恥ずかしいですからね。そこまで面の皮は厚くありません」
学科はトップの成績であるアウィスが言うと実に謙虚である。「ふん……厚そうだがな」とナハシュは眼鏡のブリッジを上げた。
「じゃあ、その対策とやらを教えてもらおうか。一教師として参考にしたい」
そこまで突っ込まれるとは思っていなかったのだろう、アウィスは一瞬怯む。
それを逃さず「どうした? 言え」とナハシュはいやらしく口角を上げた。しつこい奴だと子供らは胸中で罵倒する。
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