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「ル~~ヴ~~~……!」
ヴァルト家は村の中心あたりにある。アウィス達と別れ、門限ギリギリに帰宅したルーヴは仁王立ちのリーに出迎えられた。
「……ごめんなさい」と素直に謝るとリーは口をへの字にして、しかし軽く息を吐く。「ったく……追試だからな」と弟の髪をぐしゃぐしゃにした。
「はいはい! そこのラブってる二人、ご飯だよー。今日はラポムの炒め物とヴルスだよっ」
「やめてよ」と言いつつも嬉しそうなルーヴとリーにカペルが言う。彼女は大皿に盛り付けた料理を豪快にテーブルに置いた。ラポムはじゃがいもに似た食物で、ヴルスは腸詰料理だ。
「おお、豪勢だな」とリーはルーヴと共に食卓に着く。食事当番のカペルも座り、三人は両手を組み合わせて祈った。
「今日も無事に過ごせました。父と母と八百万に感謝します。いただきます」
リーの言葉に二人も倣い食事を始める。
ヴァルト家はリーとカペル、ルーヴの三人だけだ。親も祖父母もいない。
三人は実は孤児であり、今は亡き元村長に引き取られた。ここはその元村長の家で、遺言により三人はそのまま住まわせてもらっている。
「ん……ルーヴ、どうした? トイレなら早く行ってこい」
食事をするものの、ルーヴはどことなくソワソワしていた。友人たちとの約束が楽しみなのだ。ラポムを頬張るリーに見抜かれルーヴはギクッとする。
さすが家族である。咄嗟に言い訳を探すルーヴだったが、カペルが「もー兄さん! 食事中にトイレとかやめてよね!」と勢いよく抗議した。カペルは少々潔癖性な所がある。
「もう兄さんったら無神経なんだから……今日も休日なのに一日中仕事して。ただでさえ毎日遅くまで仕事してるんだから少しは休んでよ」
「ああ……すまん。調べものとかしてると、どうもな……」
リーは学者肌だ。仕事の傍らも常に本を片手にしており、今もそうだったりする。「本を片付けて!」と案の定カペルに怒られた。完全に話の矛先が変わりルーヴはホッとする。
実は、ルーヴが地下室に入りたいのはリーの為だ。リーも密かにそこの謎を探っている事をルーヴは知っている。
地下室の謎を明かせば彼はきっと喜んでくれるはずだと、ルーヴはテーブルの下で拳を強く握った。
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