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2・地下室
闇色の濃くなった深夜、ルーヴはとうとう動き始めた。
月明かりを頼りに一人部屋の自室のベッドから抜け出て、物音を立てないよう慎重に窓から外へと降り立つ。ドキドキと打つ胸の高鳴りをおさえ、彼はすっかり寝静まった村を北の方角へと疾走した。
「おせーよルーヴ!」
村の最北に学校は位置する。ルーヴが息を切らせて到着すると、既にアウィスとムッカは待機していた。小声で文句を垂れるムッカに「ごめん」とルーヴは詫びる。
「リー兄がなかなか寝てくんなくて」
「あー、リー先生はいっつも目の下にクマ作ってるもんな。……でカペルさんは?」
ムッカはカペルに惚れている。事ある毎に姉の様子を訊ねてくる友人にルーヴは「ふつう」と無感情に答えた。「なんだよそれー!」と怒るムッカをアウィスが嗜める。
「静かにしろ、お喋りに来たのか? 目的を思い出せ」
「……ハイスイマセン」
謝るも不服そうなムッカを無視してアウィスはルーヴに視線を移す。
「とりあえず、これから学校に侵入する訳だが、用務員の見回りがいる。よって俺がまず自分に陰魔法を掛ける。そんで伝達魔法でお前にも同じ魔法を掛ける。いいな?」
それは明らかに、授業以外で魔法を使わないルーヴを気遣っての意見だった。ちなみに、陰魔法は物や人を隠す魔法である。
しかし、魔法の二重掛けは術者に非常に負担がかかる。ルーヴは友人の優しさを有り難く思いながら「いや、俺も自分で陰魔法使うよ」と申し出た。
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