完璧超人のパーティー

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 日生(ひなせ)家のゆかいな仲間たちの紹介コーナー・パート2。子息子女編。  妹。十八。期待はするな、デブスだ。口も悪い。  高校中退後、高認をとる意思もなく、働くわけでもなく、ホモ同人(妹いわく、ホモではなくBL。どっちでもいい)を描いてばかりで、稼いだ金は本とグッズに変えるだけの腐れ女子。ちなみにメンヘラ。  そして最後に俺自身。  俺も二十歳にして、大学受験全敗の絶望感から立ち直れずに引きこもり、起きて飯食ってアニメ見てゲームして25ch眺めてシコって寝るだけをひたすら繰り返す、人間やめました系ライフを満喫している。  なお、俺は妹とは対照的にヒョロガリだ。あと眼鏡。  つまりは、一家をひとことに要約すると、全員クソ、である。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 初めてのドキドキ回復魔法にぐへへ「あら大変、別のところが回復しちゃったわ」「別のところってどこかな、はっきり言ってごらん」 ――――――――――――――――――――――――――――――――  俺たちは比較的、小規模と思われる街の入口に降り立った。上空から見た感じ、千葉県の夢の国ぐらいの大きさだった。  三人の男の人のうち一人が言った。 「ここは【エリースの街】だ。この辺のモンスターは低レベルだし、クエストも難易度の低いものが多い。駆け出しの冒険者にはうってつけの街だよ」  その人は、手近の宿屋や各種の商店、クエストの依頼を受けられる酒場の場所を教えてくれた。  別の二人の男の人が、悪意はなさげに俺を笑った。 「旅慣れてなさそうなところや、聖鎧ジョゼフ・ルイのまがい物をつかまされてる辺り、田舎から出てきたばかりなんだろ?」 「それじゃあ、この程度の街でも刺激が強すぎるかもしれんな。はははっ」  生まれも育ちも現住所もずっと都内ですけどなにか?  この人らセンター街にでも放り込んで、あんぐり口を開けてるところを撮って、「異世界人、都心に震える」ってツイッターにさらしてやりたい。まあ俺もほとんど行ったことないけど。 「けがしてるんじゃない? 早く治癒しておかないと跡が残るわよ」  お姉さんがそう言って回復魔法をかけてくれた。かすかに青く輝くオーラが、頭のてっぺんから爪先まで優しく包み込んだ。見る間に痛みが消えていく。思った以上に心地いい。人生初の回復魔法に俺はうっとりとさえした。普通にリラクゼーションとしてかけてほしいくらいだ。これ、オナホより気持ちいいかも。きれいな女の人がかけてくれているのがたまらん。エッチなコスチュームで唱えてくれるサービスの店とかありそう。 『あら大変、別のところが回復しちゃったわ』 『別のところってどこかな、はっきり言ってごらん』 『そんなの恥ずかしくて言えないわ』 『言わないと俺の聖剣で成敗してやるぞ、ぐへへ』 『いやあ~ん、昇天しちゃう~っ』  妄想をふくらませているとお姉さんに怪訝な顔をされた。  俺は咳払いでごまかし、腕をまくってみた。咬み傷はきれいに治っていた。 「失礼だが、先立つものは十分にあるのかい?」  俺は問われて初めて所持金を確認した。 【所持金:〇】  うん、知ってた。  苦笑いで俺は首を横に振った。 「八万ある。装備を整えても当座はしのげるだろう」    その人は小さな布袋を差し出した。いいんですか、と言うその前に俺は迷いなく懐にしまった。この世界の八万がどれほどの価値かわからないが、ひとまず今夜の飯と寝る場所は困らずに済みそうだ。
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