異世界の街は伊勢かい?

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テンプレ展覧会「かっ、勘違い////」「ふふ、先輩」「ウチは浪花の」「管理者認識…命令を」「わらわは幼女では」「ねえ…どうして…ねえ!」「んぎもっぢいぃ!」 ―――――――――――――――――――――――――――――――― カオスに染めあげ――――ないな……なかなか。ちょ、ちょっと時間がかかるの、かな?  若干、冷静になった俺の耳に、見物人のひそひそささやく声が聞こえはじめてくる。  ありゃなにやってんだ、変な毒草でも飲んだのかね、ここんとこずっといい陽気だからね、とかなんとか。 「あっ、えと……ですね、ちょっと時間が?かかって?いるっぽいんですよ、ええ。もうちょいしたら、皆さんが見たことのない服装と髪型とキャラ設定の子たちがそこの魔法陣から――いやまあ、俺の脳内魔法陣なんで目に見えないんですけどね――そっからわらわら湧いて出てくる予定なんで、今しばらくそのままご歓談などしつつお待ちいただけますかね?」  間が持たなくて、俺は、いぶかしげな顔の異世界人に弁明する。  槍術士(ランサー)弓使い(アーチャー)に、薪を抱えたおばちゃんに馬を引くじいさんに、清水的な舞台から飛び降りそう(飛び降りるとは言っていない)なメタボオヤジにと、視界にいるすべての人間が、新宿西口付近でなにも履かず意味不明なことを口走ってるやべー奴でも見るような目を向けていた。  これじゃ俺、ただの危ない人だ。もっと懇切丁寧に説明(いいわけ)しないと。 「いや、けして怪しい者じゃありませんよ? 俺はただ、召喚魔法『夢だけど!夢じゃ(略)』を唱えてるだけの、ごく普通の正常な人間ですから。あともうほんの少しで、こっちの世界じゃちょっと見られない個性豊かな女の子たち、たとえば  『かっ、勘違いしないでよねっ! べつにあんたのためじゃないんだから!』  とか  『ふふっ、先輩、今どき壁ドンですか? そんなことしなくたって、とっくにあたしは……先輩のこと……』  とか  『ウチは浪花の商人(あきんど)さかいねん。まいどおおきに、儲かりまっか、ぼちぼちでんがなはあいさつ代わりでっせまんがな。せやかて◯藤』  とか  『私は型式JC-14……製造番号は喪失(ロスト)……状況の確認を開始……あなたの管理者(アドミニストレーター)権限を認識……命令(コマンド)を待機する』  とか  『誰が幼女じゃ! わらわの齢の四半分にも満たぬ若造ふぜいがしった口をきくでないわ』  とか  『ねえ……どうして? どうして、私の繊毛維(おもい)を一生懸命編み込んだマフラーと、私の心血(きもち)を隠し味に心を込めて作ったチョコがごみ箱に入ってるのかな? ねえ? ねえっ? ねえっ!? ねえッ!!』  とか  『ぬほおおおおっ、んぎもっぢいいぃっ!! んああああっ、バカになっちゃううぅっ!! イグううぅぅううぅぅ~~っ!!!!』  とかのツンデレからヤンデレまで隙なく網羅した珠玉のラインナップがもう間もなく――」 「あいつですっ、魔術用のキノコかなにかで錯乱してる男は!」  いい感じに興が乗ってテンプレキャラを演じていると、住人の通報を受けた衛兵が数人、駆けつけてくるのが見えた。いかんっ。  俺はすばやく身をひるがえし一目散にずらかった。
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