犬厳、モブ厳、俺厳

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レベル三のカッパ(ハゲ)が意外とやる件 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 二、三匹ほどが舌を垂らし襲いかかってくる。 「ひいっ!」とすくみあがる俺の眼前で、悟空と八戒が迷いなく獣どもを斬りつけた。  ギャンと悲鳴をあげた犬の体が宙を舞い、ぼとりと地面に落ちる。ぞっとするほど鮮やかな血液を飛び散らせて。俺はごくりと唾を飲む。  こんなマジに血の吹き出すところ、初めて目にした。ここまで生々しい夢じゃなくていいのに。引く。  手負いの犬はほうほうの体で逃げだした。中には前足を失いまともに走れないやつもいる。悟空、八戒は、襲い来る犬たちに躊躇なく剣を浴びせ続けた。そのたびに濃厚な赤い液体がほとばしり、獣は甲高い声をあげ、負傷し、あるいは絶命する。  なんか……かわいそうだな、犬。  悠長なことを言っている場合じゃなかった。  十匹か二十匹か、数えきれないほどの犬を斬っている悟空たちに、明らかな疲れが見え始めていた。息があがり大汗をかいて剣を構えている。よく見ると腕や足に噛み傷があった。犬の数はいっこうに減らない。どこかから湧いて出てきているんじゃないかというおびただしい数だ。  こんな状況で、なにカッパ一人だけもごもご言ってんだよ。仕事しろ。転がる犬の死体に吐きそうになってて、見てるだけの俺が言うのもなんだが。  俺の考えが通じたのか、カッパがようやく明瞭な言葉を発した。 「赤き火の精霊よ、我が前にその加護を示せ。仇なす者どもに炎の鉄槌を。マーズ!」  掲げられた杖の先端から、ソフトボール大の火球が吹き出した。それはまたたく間に人間ほどの直径へと巨大化する。熱気に思わず体がすくんだ。  何匹もの犬を焼き払いながら炎の塊は直進する。犬たちはクモの子を散らすように逃げまどった。阿鼻叫喚だ。火球はまっすぐに地を這い、対面の崖に衝突したところで四散した。  通った跡には、毛が焼けてただれた肌の露出した犬たちが、ぴくぴくと痙攣し、あるいはこときれていた。これはえぐいな……。飯、しばらく喉通らないわ。  難を逃れた犬たちは遠巻きに吠えたてている。   「すげえな、カッパ。おまえ本当にレベル三かよ」 「カ、カッパ?」振り向き困惑しているカッパの名前を確認して、ロゴモンタススと言い直した。「いや、私はロンゴモンタヌスですが……」  喋っている暇はないぞ、とアルバ……テニス? 悟空が険しい声で告げた。  奴がにらみをきかせる方角には、再びにじり寄る集団があった。いや、見える範囲、全方向から獣たちが迫ってくる。 「どうやら俺が出る幕のようだな」  言い放って俺は歩み出た。
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