異世界酒場で馬鹿さ活かせい

2/7
前へ
/151ページ
次へ
トーキョー村出身の青年、吠える「欧米か!」 ――――――――――――――――――――――――――――――――  しばらく客を観察していると晩飯が運ばれてきた。熱々の肉が香ばしい匂いを湯気に乗せ、野菜がどっさり盛られたスープとともに食欲をけしかける。  胃袋にせかされて手をつけようとすると、ウエイトレスのお姉さんがまた横に立っていた。まさか食い終わるまでそばにいないよな。どんな高級レストランだよ。  俺が固まっているとお姉さんは言った。「お代を」  ああ、そういう支払い方法なんだ。俺はあわてて布袋から銅貨を取り出し手渡す。  さて、飯だ。肉にフォークをぶっ刺そうとした。が、手はそのまま宙で止まる。  ……えーと。お姉さんがまだ隣にいるんだが。  あの、なにか、と聞くとお姉さんはなぜか出身地を尋ねてきた。いきなり逆ナン?   俺はちょっとどきどきして、東京ってとこですけど、と答えた。 「そのトーキョーって村にはないんでしょうけど、街ではね、チップっていうものを渡すのが礼儀、常識なの。わかるかしら、ぴかぴか装備の新人くん」  いろんな感情が混ざって俺は顔から火を吹きそうだった。耳まで真っ赤だ。  早く行ってもらおうと、適当に銀貨をつかんで渡した。 「えっ、千イェンも? 気前いいね。じゃあいいこと教えてあげる。あそこの隅のカウンターでクエストを受注できるわ。ここのはほかの酒場より実入りが多いわよ」  お姉さんは軽い足どりで戻っていった。しまった、渡しすぎだったのか、くそっ。  妙に日本的な一面が多いのに、なんでこんなとこだけ欧米的習慣が。てか、うちの近所は村じゃねえわ。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加