異世界酒場で馬鹿さ活かせい

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スクールカーストの最底辺にいた俺がブルーカラーな連中とお話なんて、ナイフ一本で戦車隊に突撃するようなもの ――――――――――――――――――――――――――――――――  それにしても、あの四人の美男美女軍団はすげえよ。ドラゴン討伐の報酬に目もくれなかったわけだ。気前よく八万イェンも渡してくれたし、どんだけ持ってんだ。所持金、カンストしてんじゃねえのか。 「あたしは今夜はもう帰るから。最初のクエストはじっくり選んで決めるといいわ」  受付のお姉さんはそう言い残し、「本日受付終了」の札を出して奥に消えた。  俺はしばらく依頼票を眺めていたが、人の集まっているうちに情報収集をしておかないと、と思い出した。うまくいけばパーティーメンバーもゲットできるかもしれない。  手近なテーブルのパーティーに近づいて、俺は、あのう、と声をかけた。 「でよ、俺がレベル四だって聞いた途端、奴は真っ青よ」 「だはははっ、傑作だぜ! そんだけ調子こいといてレベル二だったのかよ」 「おめーも人が悪ぃな。新人いびりもほどほどにしねーとメンツ増えねえぞ」  そいつらは俺のことなんか気づきもせず、大声で笑い、手を叩き、話を弾ませる。  シカトしてるわけじゃなかった。俺が蚊の鳴くような小声で、中途半端な距離をとっているからだ。  もう一度、あのー、と呼びかけてみたが、がははは、との大笑いにかき消された。  だめだ。無理。  俺は中途半端にコミュ障だ。会話の必然性があるシチュエーションでならそこそこやりとりはできるんだが、雑談だとか初対面で話しかけるとかは壊滅的に苦手だ。  笑われたらどうしよう、馬鹿にされたら。そう思うと足がすくむ。実際、さっきだってふたりものお姉さんの前で赤っ恥をかいたじゃないか。スクールカーストの最底辺にいた俺が、ブルーカラーな連中とお話なんて、ナイフ一本で戦車隊に突撃するようなものだ。  俺は顔を伏せ、テーブルの間をつかつかと歩いた。そこかしこから飛ぶ笑い声が自分に向けられているように感じられていたたまれない。  カウンターテーブルに座ると俺は、強めのやつを一杯、とバーテンダーに注文した。
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