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【悲報】異世界で最初の朝、とんでもないことになっていた……
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俺が勇者ってことは、魔王とやらを退治するまでは元の世界には戻れないと。やれやれ、とんでもない使命を負わされたもんだ。
内心のまんざらでもない気分が口の端に出つつ、俺は肩をすくめた。
こうなったら開き直ってやる。とことんつきあってやろうじゃないの。もの心ついたときからゲームとアニメにどっぷり浸かってるネイティブ、ナメんなってとこ見せてやる。
まずはクエストを受注してレベル上げと資金稼ぎだ。どれ、酒場が開くまでその辺を見てまわるとしようか。
俺は、人気のない通りをさっそうと歩きだし――すぐに足を止めた。なにかがおかしいことに気づく。
――剣が、ない。
ゲロのところを見たが落ちてはいなかった。よく考えてみたら盾も持っていないし兜もない。それどころか鎧さえ身につけていない。
酒場に忘れたか。いや、べろべろに酔っていたが、出たときは全部持っていたのを覚えてる。
まさか。
嫌な予感がして懐を探った。
有り金が入った小袋、アイテムをまとめた道具袋、金目のもの――――いっさいなくなっていた。
と、盗られた…………全部。
「うああああああああーっ!」
すこやかな朝の街に、俺の悲痛な雄叫びが響いた。
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