犬厳、モブ厳、俺厳

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犬厳、モブ厳、俺厳

 これは俺、【日生 空(ひなせ そら)/二十歳/無職童貞引きこもり】が、(都合よく)言語が日本語の別世界に紛れ込み、(途中まで)キャッキャウフフしつつ、ついでに魔王とか討伐してみようかな(討伐するとは言っていない)なんてゆるーくいい感じになんやかんやアレする、正統派・邪道系| (どっちだよ)ファンタジー、である。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― Re: 今から異世界転生というべったべたな目にあう件について ――――――――――――――――――――――――――――――――  ――囲まれたっ。  ――ちっ、なんて数だ。  ――術式展開する、援護を頼む!    そんなやりとりが、どこか遠くで交わされていた。ぼんやりとした意識が焦点を結ぶ。  俺は、背を向けた三人の男に囲まれ、切りたった岩壁に背中を張りつけ立っていた。  そこは峡谷だった。谷の上部は生い茂る木で緑豊かだが、ほかは見渡す限り灰白色の岩肌がむき出しの、荒涼とした場所だった。空も寒々しく感じられる鉛色だ。  俺はのっぴきならない危険にさらされていた。俺を含む四人の人間にわらわらと群がる無数の犬。岩壁の周辺、ぐるり百八十度、俺たちを包囲している。尻尾を振って愛想を振りまく奴なんて一匹もいない。敵意をむき出しにし、低くうなり、あるいは吠えたてる。  なんだここは、これは? こいつら誰だ?
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