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「父さん、倒産しちゃった。ぶっふふふ……」
「お父さんったら、そのギャグ昭和臭いわぁ~。ぶっふふふ……」
突然、父親に「リビングに集合~」と呼ばれてきてみれば、ふざけた言い方でお先を真っ暗にされた。
私と兄は、絶句である。
別けるとしたら、あまり物事を深く考えないポジティブ過ぎる親と、現実主義でネガティブな子供という感じか?!
「ちょっと待ってくれ、親父…それって……」
「この家も何もかも無くなる。銀行の人から、抵当に入ってるから、早々に出てってくれって言われたが、父さんの話術で、早々を1ヶ月の猶予にしてもらったぞ!!」
「いやいや、無一文は何にも変わってねぇしっ!!」
兄と父の会話についていけず助けをこうように母を見たら、鼻歌を歌って荷物を整理していた。昔、ボロアパートから此処に引っ越した時のそれとダブった私。
これはあれか、母にとっては引っ越しという括りで同じなのか?
その瞬間、我が母にも脱力した。
結局、兄は大学があと2年残ってる以上、バイトを増やして卒業するといい荷造りを始めた。友達のアパートに間借りさせてもらって、ワンルームを探すと決着がついたのだ。
じゃ、私はどうすればいい?
あと半年とちょっとで卒業……。進学を諦めて、就職組に行くかの瀬戸際だ。
いや、もう遅いかもしれない、、、。
『・・・。(明日、先生に相談だな…)』
親に相談ではなく、担任の先生という時点で私の両親は充てにならないという事だ……。
眉間に皺を寄せて考えてる私に、兄が声をかける。
「つぐみ、本当に悪い…。俺も苦学生でお前を養えない。不甲斐ない兄ですまん!」
『あっ、気にしないで。というか、普通親がその言葉だよね?!しかも何で両親があんなんで、子供が現実を見てんの?!』
「……俺、涙じゃなく情けなくって笑えてきた」
私は、笑えねぇ・・・。
そして1週間後、一戸建てからアパートに引っ越しとなったのだった。
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