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ただの声に反応しただけだろうが、ゴブリンは襲おうとしていた人たちから俺のほうへ視線が移ってきた。どうやら、うまくターゲットを誘導できたらしい。
「さあて、チート能力を手に入れた俺の晴れ舞台だ。せいぜい楽しませてくれよ、ゴブリン」
そう言いながら、適当に戦闘態勢のつもりで構えた。どんな構えがいいのかは知らないから、完全にノリに任せたポーズ……じゃなくて、構え。
ゴブリンの身長は一メートルいかない程度だろう。俺がもといた世界では高校生だった。ゴブリンはそんな平均的な背丈だった俺の半分ほどの大きさか。
ゴブリンに対して、俺は一気に踏み込んだ。
さすが、チート。俺自身も驚くスピードで数メートルあったはずの間合いは一瞬で詰められた。その勢いのまま、右手の手刀を水平に振り払う。
放った俺自身ですら感じ取れるほどの空圧が発生。大気を切る音が耳に届く。だが、そのゴブリンの首を狙ったはずの一撃は空振りに終わっていた。
ゴブリンは上半身を前に倒し、俺の手刀を避けていたのだ。そこで、すかさず態勢を保ちつつ、右足による蹴り上げをお見舞いしてやる。だが、その一撃も、ゴブリンは空へ逃げる形でジャンプし避けてくる。
「ちっ、また避けやがった」
初手合わせた二撃が空振りに終わり、苛立ちを覚えつつも、空にいるゴブリンめがけて跳躍を図る。
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