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ピピピッ、ピピピッ……
私は目覚ましを止めると、一つ大きく伸びをした。
「あぁ、学校行かないとな。」
ちなみに私の出身は、静岡県の都会とも田舎とも言えない場所。
デビューに合わせ上京してきて、事務所が所有しているマンションの一室で一人暮らしをしている。
本当は大学なんて行かず、歌手としてステージで輝くはずだったのにな(笑)
ささっと用意をして家を出た。
授業にでても、真面目に授業を聞いたことなんてない。
いつもノートじゃなく、五線譜を机の上に置く。
……まぁ、一文字も書けないんだけど。
午前の授業が終わり、友達の薫と食堂に向かった。
「歌手辞めよっかな。」
「また?最近、その言葉口癖になってじゃん。」
「一時間半五線譜を前にしても、コードの一つも、歌詞の一文字も出てきてくれないんだよ。……昔は多い時、一日に3,4曲出来たのに。」
「でもさ、羽衣は歌うことは好きなんでしょ?だったら誰かに曲、書いてもらいなよ。」
「そうしたいけどさ、こんな落ちた歌手に誰が曲書いてくれるかってーの。……自分でどうにか這い上がるしかないんだよ。」
「這い上がるしかないって、あんた這い上がろうとしてないじゃん。」
「その情熱がないから、やめようかなって思ってんのよ。」
「もし辞めたらさ、あんたの歌声は私だけの物ね。」
「は、何で?」
「だって羽衣、私以外とカラオケ行かないじゃん。」
「確かに、薫だけのものになるわ。」
「でしょ?」
その後も雑談をし、午後の授業をこなした。
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