(二)

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「キューポラのある街」って映画だったよな、確か。 すっげえ可愛いの、吉永小百合って。 おじさんなんか「女神さまみたいで、後光が射して見えたもんだ」って、言うもんな。 だけど、何となく分かる気がするぜ。 サユリスト、なんて言葉が流行ったのも。 だからさ、その吉永小百合に、あいつ似てるんだよ。 もっとも、俺一人だけどな、それを言ってるのは。 みんな、「似てねえよ!」って言うんだ。 そうかなあ、似てると思うんだけどな。 あいつ、バレーボールの部活をやってんだ。 一年生なんだけど、エース候補らしいんだわ。 顧問に気に入られてて、部活終了後に特訓を受けてる。 まあな、そのせいで先輩達からいじめらしきことをされてるみたいだけど。 何で知ってるかというと、俺の友だちがバレーボール部だからさ。 もっとも、男子と女子と、別々の部なんだけど。 男の方は、肩身の狭い思いをしてる。 何せまだ対外試合で一度も勝ったことのないチームだもんな。 それに比べて女子の方は、名門チームとして名を馳せてる。 まっ、ちょっと斜陽だけど。 地区大会ではいいところまで行くんだけど、ここ何年か県大会に出場できないでいるから。 で、あいつの登場だ。 もう一人レシーブのうまい子がいて、二人して徹底的にしごかれてる。 来年は、ひょっとして県大会? って、噂だ。
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