(三)

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〝トン、トン〟 誰かが背中を叩いてきた。 振り向くと、なんとまあ、「何やってんの、こんな所で」と、あいつがビックリ顔をしてる。 「えっ、ええ! お前こそなんだよ。部活動は、どうしたんだ!」 少し詰問調になっちまった。 目の前にスポーツ店の紙袋が差し出されて 「シューズ、買ってきたの。サボりじゃないよ。先生の許可、貰ってるんだから!」 と、フグみたいに膨れっ面してた。 俺の奢りで、焼きそばを食べることになった。 そう言えば、朝飯食べてなかったんだ、俺。 「早く戻らなくていいのか?」 「いいの!」 語気鋭く返事が返ってきた。 どうやら、また先輩達からのいじめがあったみたいだな。 適当に聞き流せばいいものを、ムキになって反論したりなんかするから。 もう一人の、ええっと誰だっけか、名前が思い出せないゃ、あの娘みたいに頷いてりゃいいのに。 まっ、この負けん気の強さが、アタッカーには必要だってことだろうさ。 「ねえねえ。あの人とはうまくいってるの?」 上目遣いに聞いてきた。まったくドキッとする。 時々艶っぽいんだよ。 「ああ? あの人って、だれだよ」 「誰だよ、って、とぼけないの! midoriさんのことよ。行ってきたんでしょ、この間」 「フラレたよ、フラレました。ものの見事に。と言うより、恋人がおみえになりました」 「あきれたあ! 年上の女性でしょ! そんなこと、考えてたの。小説のお勉強会だったんでしょ、あれって」 嬉しそうに、俺の肩をバンバン叩きやがってえ。痛いっつうの。
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