(五)

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~~~~~~~~~~~~~ エッフェル塔の下のため息を           気まぐれな風はパリの町へ運んだ コートの衿を立てて急ぎ歩く旅人を          冷たい風は(はや)し立てた 今 風は眠っている          (あした) 風はまた吹くだろう 流れるシャンソンのメロディーは    浮かれた風をグラン=プールへ連れてきた  胸を病む画家達の間を    浮かれた風が囃し立てた セーヌの川に置き忘れられた郷愁さえ    風は吹き飛ばしていた ~~~~~~~~~~~~~ 「まーた、訳の分かんないもの書いてるう! もう少し分かりやすく書けないの。 風が眠るわけないでしょ、止んだって書きなさいよ。 囃し立てるって、ナニよ。吹き荒れたって、こと? 疲れるのよね、いっつも」 「お前みたいな、がさつな女には分かんねえよ。 いいじゃねえか『素敵な詩ですね。大好きです、わたし』って言ってくれる女の子が、そこら中に居るんだから」 「それは、良ござんした。 ところでさあ、明日、部活動、休みになったの。で、ね。仕方がないから、一日相手してあげる。えっ! kazukoさんとデート? あたしが相手できるのって、珍しいんだよ」 「そうは言ってもな、今日の明日じゃな。kazuko、怒るし。もうちょっと、だしな。なにがって、なんでも良いだろうが。だから、また今度ナ。話なら、いつでも聞いてやっから」 まずったよな、実にまずった。今思えば、あの時だったんだな。 あの時あいつに付き合ってたらどんな風になったかは、それは分からない。
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