(六)

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過去の出来事を、美しい想い出としてなんか残したくない。 センチメンタリズムに浸りたくない。 冷たい男かも、俺って。 他人の心の中に、過去の自分があるなんて我慢できない。 アパートを引っ越そう。1Rから抜け出そう。 ~~~~~~~~~~~~~ 花開く幻の都 その影をふるえる水面に映す ギターの爪弾きとゴンドラの哀しい叫び声は 水面を刺す 落日がガナル=グランデに洸々と映え そしていよいよ朝が! 吹きすさぶアルプスの峰に 二つの黒いしみ 雲の上に点々と 朝に輝く雲海の光は アルピニストの背に 強い光を落とす 天に突き上げられた二本の旗 その日 太陽は三つとなった 時の流れは今 川となりました 銀の皿は流れるのです その上に空を乗せたまま その夜 空は消えました その朝には 太陽が消えました ~~~~~~~~~~~~~
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