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大公の子供は運命と呼ばれる魂の番でなければ生まれることはない。この世でたった一人、本能が呼び合う魂の番は、本能以外に血で見分けることができる。ゆえにオメガは皆血液検査をされて国が大公の番であるかどうかを調べるのだ。そして見つかれば大公と引き合わされ、番だと認定されれば揺り籠と呼ばれる場所で徹底的に隔離されて知識を詰め込まれる。万が一にも大公以外の者と番うようなことがあってはならないし、本人にその気がなくとも、発情期のオメガは多くのアルファを誘うフェロモンを発してしまう。オメガを守るためにも、大公の番は隔離されるのだ。そして成長すると大公と結婚する。駿河大公が結婚すれば、三人の大公の内二人が妻帯者となり、残りは一人となる。だが、この最後の一人である志摩大公が大問題なのだった。
彼の番は未だ、見つかっていない。
大公は結婚するまではあまり公に出てこない。それは彼らもアルファであるためにオメガが意図して彼らの前で発情すると危険だという理由もあり、結婚するまでは国民のほとんどが姿かたちを知らない状態だ。ただ年齢くらいの差しさわりのない情報は流れている。たしか志摩大公は楓よりも五つほど年上の三十二歳だったように記憶している。流石にまだ彼の番が生まれていないということはないはずなのだが、国の血液検査で彼の番として引っかかったオメガは存在しない。そのことで本人はどうか知らないが、周りは血相を変えているようだ。現に今も駿河大公のニュースでアナウンサーの女が志摩大公の番について触れている。だがやはりまだ見つかっていないようだと楓は着替えながらぼんやりと見ていた。
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