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君に誓う
恐ろしい程の怒声が聞こえた。
まるで時代劇に出てくるような、沢山の甲冑が硬質な音を鳴らしている。それと同時に地鳴りのような足音も聞こえた。だんだんと自分に近づいてくる。
何か恐ろしいものが近づいてくる。それがわかっているのに、なぜか自分の心は凪いでいた。恐怖も畏怖も何もない。何かが近づいてくるのに、ペタンと座り込んだ自分は逃げるどころか立つことさえも億劫だった。指一つ動かすことなく、ただ茫然とそこにいる。気づけば瞬きさえもしていなかった。だが瞳は乾くどころかひどく潤んでいる。それこそ瞬き一つでもすれば、頬に零れ落ちてしまいそうだ。
茫然としていると、逞しく、あたたかな温もりが背中から自分を包み込んだ。馴染んだ温もりを、自分は知っている。とても大切なもので、もう数え切れないほど昔から自分の側にあった温もりだ。その温もりの主もまた、不自然なほどに心が凪いでいるのが自分にもわかる。
耳元で何かを囁かれた。だが、その言葉を思い出すことができない。強すぎるほどの力で抱きしめられて、目の前が青白い光に染まっていく。何かが聞こえたような気がしたのだが、もう何もわからなかった。理解しようとする気力も、もうない。
青白い光が自分を包んで――……そこで目が覚めた。
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