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頬を膨らませてこっちを睨んでくる磯田の髪に手を伸ばす。ルミさん以外にこの痛んだ髪を直せる人はいるだろうか。それに変なヤツに磯田に触れてほしくない。口の固い信用できる人じゃなきゃとても任せられない。
「……あ。こないだの」
思いついて声を上げると磯田が不安そうに見上げてくる。
「こないだの、食レポの時の美容師さん」
「あー……」
強烈だったから磯田もすぐ思い出したようだ。
「あーいう人にだったら磯田に触らせてもいいかな。勘も良さそうだし、なんか面白かったし」
「なんとなくわかるけど。あーいう人いるかな?」
「てか、あの人がいいな。あの人に頼めないかな」
「無理じゃない?結構人気ある美容師さんだって言われてたし」
「それは、頼み方次第じゃない?」
例えばルミさんが戻って来るまでの二年間。俺たちと一緒に仕事してくれませんか?と。
きっと商店街では味わえないような経験ができますよ、と。
そう伝えたらどんな反応をするだろう。
家族はいるのかな?
友人や恋人はいるのかな?
二年でいい。来てくれないかな。
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