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「ごめんなさい。あなた、この館から出てっていいわ。本当は秘密を知られた者は生かしておけないんだけど……今度のことは、あたしの手違いだし」
「待て!」
還れない上に、出て行けだと?
「嫌ーな予感がするんだが、ここにインターネットはあるか?」
「え……?」
おい! そこでキョトンとするのは、止めてくれっ!
「テレビは? スマホは? 電子レンジは?」
「な、んの……呪文?」
うわ、やっぱりだ! ヤバい、ヤバい展開じゃね?
背中に嫌な汗が滲む。ちょっとしたパニックになりながら、俺は思いつく単語を並べていった。
「冷蔵庫! 自動車! 航空機! コンビニ! レトルト! ICカード! 知ってる物は?!」
呆気に取られたジャンヌの顔を見て、絶望が訪れる。思わずガックリと肩を落とした。
「あの……何だか、ごめんなさいね」
気遣う白い指先が、俺の膝に触れる。
「――いつだ?」
落ち込んでも、何にもならねぇ。割り切りの早さも、俺の美点だ。
「現在は、何世紀なんだ?」
「あの……えっと」
そういう概念は、ここには無いのか?
「西暦は、何年だ」
「あ――!」
やっと共通の知識に行き当たったらしい。ホッとしたのも束の間、ジャンヌは恐ろしい数字を口にした。
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