牲(いけにえ)は新世界より(1)

3/3
10人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「ごめんなさい。あなた、この館から出てっていいわ。本当は秘密を知られた者は生かしておけないんだけど……今度のことは、あたしの手違いだし」 「待て!」  還れない上に、出て行けだと? 「嫌ーな予感がするんだが、ここにインターネットはあるか?」 「え……?」  おい! そこでキョトンとするのは、止めてくれっ! 「テレビは? スマホは? 電子レンジは?」 「な、んの……呪文?」  うわ、やっぱりだ! ヤバい、ヤバい展開じゃね?  背中に嫌な汗が滲む。ちょっとしたパニックになりながら、俺は思いつく単語を並べていった。 「冷蔵庫! 自動車! 航空機! コンビニ! レトルト! ICカード! 知ってる物は?!」  呆気に取られたジャンヌの顔を見て、絶望が訪れる。思わずガックリと肩を落とした。 「あの……何だか、ごめんなさいね」  気遣う白い指先が、俺の膝に触れる。 「――いつだ?」  落ち込んでも、何にもならねぇ。割り切りの早さも、俺の美点だ。 「現在(いま)は、何世紀なんだ?」 「あの……えっと」  そういう概念は、ここには無いのか? 「西暦は、何年だ」 「あ――!」  やっと共通の知識に行き当たったらしい。ホッとしたのも束の間、ジャンヌは恐ろしい数字を口にした。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!