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「ロウは学校楽しい?」
「……どうして?」
「だってロウ、学校のお話、全然してくれないじゃない。クラスが違うから、どんなことしてるのかわからないし」
口を尖らながら彼女は、ボクを真剣な目で見ていた。いつもの元気一杯力百倍のような笑顔ではなく、申し訳なさそうな、自信のなさそうな顔をしていた。
「わたしがロウに学校へ行こうって、誘ったんだもん。ロウも楽しくないといやだな」
「……楽しいよ」
「ホント?」
「ホントにホントだよ」
そうボクが答えると、先ほどまでの心配そうな顔は消え、いつもの通りのボクの好きな元気な可愛い笑顔に戻っていった。その安心したかのような表情に、ボクのためにここまで悩んでくれていたのかと申し訳なさも反面、後ろ暗い喜びもあった。
彼女はボクの答えに納得したのだろう、食べかけのホットドックを口に押し込むと、一人で先に走り始めた。
「それじゃあ先にどっちが学校に着くか競争!!わたしのほうが学校好きだもんね!!」
遥か彼方に消えていく彼女を追いかけるために、ボクも彼女を追って走り出す。
「学校の到着時間でどっちのほうが好きかとかわからないとと思うけどな……」
それよりもボクは彼女と歩くのが好きだった。二人で死んだように眠った街を歩くのも、寒い中くだらない話をたくさんするのも、楽しかった。
走って急いでしまうと、その時間が短くなってしまうじゃないか。チエに追いついて、二人でゆっくりと歩いていきたい。
「ボクの好きな時間は……君との通学路だよ、チエ」
ボクとチエだけの通学路。白々とした光が、僕達を照らしていた。
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