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明け方の白々とした光が、ボクたちの街を包み込む。凍てついた空気が、寝起きのぼんやりとしたボクの頭に気持ちがよかった。空は快晴で、絶好の昼寝……いや朝寝日和だった。
欠伸を噛み殺しながら、おろしたてのスノーブーツで雪道を進んでいく。すると目の前に、見覚えのある群青色のリボンが揺れていた。
「チエ、おはよう」
そう声を掛けると、少女がリボンを大きく揺らしながら振り返る。彼女の小さな手には不釣り合いな大きさのホットドックを、その小さな口でモグモグと食べていた。鼻の頭にケチャップをつけるおまけつきだ。
「ロウおはよう!!今日もいい天気ね!!」
「チエは朝から元気だなあ」
小走りに彼女の隣に駆け寄り、二人並んで歩き出す。街はとても静かで、この世界にはボクと彼女しかいないような錯覚を引き起こす。
「ごはん食べて元気もりもりですから!!だってまだまだ歩かなきゃいけないんだよ?」
ボクとチエが通う学校は、歩いて二時間もかかる場所にある。日が昇る頃に家を出ないと、学校の始業時刻に間に合わない。
サクサクサク……雪を踏みしめながら、ボクたちは眠ったままの街を歩く。
「今日は学校でなにをするのかなあ。わたしね、国語が好きなの。この前難しい文字も書けるようになったのよ」
えへん、と胸を張る彼女の鼻の頭には、ケッチャップがついたままだ。面白いから気付くまでほっとこう。
チエはちらちらとボクを見て、何か聞きたそうにしていた。ボクはそれに気付きながらも素知らぬふりを決め込んでいると、しびれを切らしたのか力一杯に、ボクに問いかけてきた。
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