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一緒に眺めていた絵本のこととか、おゆうぎ会で雅樹が演じた役とか、断片的な記憶はわたしの中にもある。母親同士が仲が良かったから、わたしの家が引っ越した後も、ときどき連絡を取り合って、年に一度は食事会をしていた。
小六と中一で、わたしと雅樹はまた同じ学校の同じクラスになった。まわりには「親同士がもともと知り合いだ」とだけ言っておいた。引っ越しの多いわたしにとって唯一の幼なじみなのだけれど、そんな言い方は気恥ずかしくて、誰にもできなかった。
わたしは雅樹から顔を背けた。引け目を感じてしまった。雅樹は頑張っている。わたしは学校を休んでばかりいる。
でも、雅樹はわたしの後ろめたさなんて気付きもしない様子だった。
「新しい学校、どう?」
「どうって、別に……普通」
「ま、蒼は勉強できるし、どうとでもやれるか。おれは、張り合う相手がいなくなって物足りないけどさ」
「ひとみがいるでしょ」
「三(さん)羽(ば)烏(がらす)とか三(み)つ巴(どもえ)とか言われてたのが、ツートップになった。危機感が薄れた感じ。おれの成績、落ちるかも」
「人のせいにしないでよ」
「蒼は、高校も町のほうの公立に行くんだろ? おれもひとみも、そっちに出ていく予定。そっちでまた一緒の学校になれるんじゃないかな」
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