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短くて重たい電話を終えた。わたしはそのまま呆然と座り込んだ。
わたしに何ができるんだろう、と考えた。智絵のために何かできないだろうか。わたしにできることって、何だ?
智絵は、わたしに会える状態じゃなくても、わたしの小説だったら読んでくれるかな? 喜んでもらうこと、できないかな? 一時でもいいから現実を忘れるための助けにならないかな?
始業式の日、一人で登校した。生徒玄関の前に人だかりができていた。クラス分けの表が貼り出されているせいだ。
授業中にだけ掛けるメガネをカバンから取り出して、レンズ越しに人の頭の後ろから、クラス分けの表を見る。智絵とは別のクラスになっていた。
二年のころのクラスで幅を利かせていたグループはみごとにバラバラになったらしい。ぎゃーぎゃー騒いでいる人たちに巻き込まれないように、わたしは人だかりから離れた。
三年の靴箱の場所がわからなくて、ちょっと迷う。一年のころからいたわけじゃないから、琴野中の常識がわたしには欠けていて、不便だなと、ときどき感じる。智絵がいたら、教えてくれたのだろうけれど。
ふと、呼ばれて顔を上げた。
「蒼さん」
上田がいた。わたしはちょっと目を合わせて、すぐに顔を背ける。
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