一 中学二年生:転校と不登校

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 あっちからもこっちからも派手な笑い声が聞こえると思えば、先生だとか先輩だとか、欠席しているクラスメイトだとか、別のクラスの有名人だとか、とにかく誰かをバカにして、その人の物真似をしたりしている。  ゲラゲラ笑い転げる輪の中に誘われて、昼休みを一緒に過ごした日があった。自分の顔が引きつっているのがわかった。胃がキリキリした。 「ごめん、ちょっとトイレ」  隣にいた子に断って、輪を抜ける。 「一緒に行こうかー?」  大声で言われる。 「ウチも行こっかなー?」 「あっ、ウチもー」  ぞろぞろついてこようとする。  わたしは振り返って、作り笑顔で答えた。 「もう校内の配置とか頭に入ったし、迷わないから大丈夫。ありがとう」  ついてくるな。そう吐き捨ててしまいたかった。  この一件が決定打だった。わたしは最初から友達なんか作るつもりもなかったけれど、琴野中学校は絶対に無理だと思った。何でこんな学校に通うことになっちゃったんだろう?  一人で過ごそうと決めた。もともと、一人でいても平気なタイプだ。  開き直ったつもりだった。でも、聞こえてくるまわりの声は、どうしたって、うっとうしかった。  気晴らしをしたい。どこか遠くに行きたい。  何となく、そんなことを考えた。だから五月の連休の初日の朝、衝動的に列車に乗った。向かった先は、前に住んでいた木(こ)場(ば)山(やま)郷(ごう)だ。     
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