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あっちからもこっちからも派手な笑い声が聞こえると思えば、先生だとか先輩だとか、欠席しているクラスメイトだとか、別のクラスの有名人だとか、とにかく誰かをバカにして、その人の物真似をしたりしている。
ゲラゲラ笑い転げる輪の中に誘われて、昼休みを一緒に過ごした日があった。自分の顔が引きつっているのがわかった。胃がキリキリした。
「ごめん、ちょっとトイレ」
隣にいた子に断って、輪を抜ける。
「一緒に行こうかー?」
大声で言われる。
「ウチも行こっかなー?」
「あっ、ウチもー」
ぞろぞろついてこようとする。
わたしは振り返って、作り笑顔で答えた。
「もう校内の配置とか頭に入ったし、迷わないから大丈夫。ありがとう」
ついてくるな。そう吐き捨ててしまいたかった。
この一件が決定打だった。わたしは最初から友達なんか作るつもりもなかったけれど、琴野中学校は絶対に無理だと思った。何でこんな学校に通うことになっちゃったんだろう?
一人で過ごそうと決めた。もともと、一人でいても平気なタイプだ。
開き直ったつもりだった。でも、聞こえてくるまわりの声は、どうしたって、うっとうしかった。
気晴らしをしたい。どこか遠くに行きたい。
何となく、そんなことを考えた。だから五月の連休の初日の朝、衝動的に列車に乗った。向かった先は、前に住んでいた木(こ)場(ば)山(やま)郷(ごう)だ。
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