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ままま、知ってた、知ってたよ。 最高級?最上階? そんな扱い、ハナからされてないって事は、さ。 だって初めてが公衆トイレだし?それから会いにも来やしないし?会いに来てみりゃセフレに遭遇するしぃ?まぁ…してくれるってのはありがたいんだけど。いや待てよ、 今日の第一候補だってまたトイレだったじゃんか! これは……愛されてはいないのでは…なかろうか?ーーと、 思った一瞬、一瞬ね。 何をおこがましい事言ってんだ俺(言ってはないけど)、サシデガマシイ。 いいじゃないか安っちいラブホだって。 そんないいトコ、急には入れないってばよ。 持ち合わせとかさ、予約しなきゃとかさ。 何かあんだよ。 いいんだいいんだ。だって俺〝ラブホ〟自体が初めてだし、色々見れて楽しいし。 お店の人と顔合わせなくて済むとかさ、色んな部屋があるとかさ。テレビつけたらエッチぃチャンネル流れるとかさ、見放題とかさ。ってか見ないけどさ、見せないけどさっ、女だろーが男だろーが! 聖人さんが〝おっこっちの方がいいな〟とか思っちゃわないように。ってかそんな心配してる時点で愛されてなくない?? これは…思ったよりさっきのセフレが…脳ミソに到底消えない傷を負わしてくれてやがるぜ……俺の確固たる〝王子様論〟をも打ち砕くーー いやいや!こっからだよ。俺と会ってこっからこの人は変わるんだよ。本物の〝王子様〟にさ。この安っちいラブホでーー… 「お前〝安っちいラブホだな〟とか思ってんだろ」 「え!」 慌てて消したテレビのリモコンを持ったまま、 ベッドのへりに腰を下ろしてボーッとしている自分に意識が戻る。 「めめめ滅相もない!」 「嘘つけ。ホテル見た瞬間から様子がおかしかったぞ」 とか言いながら、しっかり俺のブラザーを脱がしている。 「だだだって、初めてだし?きっ緊張するし?」 それは本当。だって初めてはもうわけ分かんなくなってたし、急に今、これからする事される事を……思い出した。 「あーそうかいそうかい」 シャツのボタンを外した所で、 「バンザイ」 「……」 子供じゃ…ないんだけどな。 上半身が急に寒いのと…恥ずかしいのとで、自分の体を抱くようにする。 「あ…あの…」 「はい、ここ」 「……」 ポンポンとする枕の所まで…行って、 「寝る」 「……」 診察?お医者さんみたいに言われて、患者の俺はますます緊張する。 「あ…あの、ゆゆっ…ゆっくり……」 覆い被さってくるこの人の、目が…見れなくて。どっかヘンなトコを、見てる…… 「なんで」 「だって…ちゃんと…して、もらうの…初めてだし…」 「あー…前は何か、変な感じだったしな」 「うん…」 こうやって、見つめ合ってキス…なんて……ドキドキする。 「何でだろ、お前見てると……止まらない」 「…ぅんっ」 舌を絡めとられると一瞬、つま先から電流が全身に走って、頭を抜けてったみたいになる。 体が勝手に……ヘンなスイッチを押して、変形しようとしてる。 俺じゃ、ないモノに。 「へ、変なんだ…俺も…っ」 触れられただけで。 「風邪引いたみたいにさ、あ…」 「…熱い…」 そう、熱いんだ。 胸に置かれた手のひらも、そうで。 どっちの熱か、分からない。 「あっ」 乳首をぱくんとやられて、電流二回目。 「あっあ…っ」 チロチロやられて、思わず聖人さんの髪を両手で掴んだ。 「…美味い」 「う…嘘、お風呂入ってないもん」 「お前の味が、美味いんだ」 何それ、何か…嬉しいんだけど! 「も…もっと食べてぇ?」 おかしいな、おかしいかな俺。 ーー全部食べられたいなんてーー 「あっ…ん!ソコ!は…ぁっ」 だからって、いきなりぱくんとするなんて! 結構前から硬くなってたソコを、棒キャンディーのように舐められる。 「食えって言っただろが」 「ん〜、い、言ったけど〜ぉ」 初心者にそれは、急過ぎる! 「はぁ…っん…あ…っ」 熱い。熱くなってくる。 また……あの時と、おんなじ感じがする。 体がボワっとなって、頭がボーッとなってーーいや何か、逆に冴えてくるみたいに。 聖人さんをどこまでも感じようと、自分の細胞が、色めき立つ。 あぁ、これって……やっぱり、 「やっぱり…」 「ふ?」 俺を咥えたまま、目だけで俺を見る。 「…運命…?なの…かなぁ…」 その目がどっかヘンなトコを見て、 「……知らね」 もう! 「そこは『そうだよ』なトコでしょ〜〜!!」 両手で布団をバンバンやる。 「うるせーなぁ」 「えっ」 その両手首を頭の上に拘束して、顔を近づけてくる。 「…あ…っ」 不機嫌に据わった目の聖人さんにゾクッとする…のは、 俺がMだからって訳じゃ…ないぞ。 「違った運命なら俺が、潰してやるよ」 「…んっ」 電流なんてモンじゃない。言葉だけで、イっちゃいそうになる……あぁ、俺。 やっぱ俺、Mでいいや。 「運命ごと、貰ってやる」 「聖人さん…っ」 聖人さん限定の、Mで。 貰ったキスに、吸い付くように答えた。 掴まれた腕がもどかしいくらい、抱きついて、 離れたくなかった。 運命なんて、何の意味があるだろう。 俺と、聖人さんの間に。 運命なんて。 あんなにこだわっていた俺が今、運命を、 この手で潰してしまいたくなった。 たとえ、運命じゃなくたって、 聖人さんが、俺の〝王子様〟 「ありがとう、送って…くれて」 まさかそんな事、してくれるとは思ってなかったから。家の前、門をくぐるのが…惜しくなる。ホントはもっと…ずっと。 一緒に、いたいのに。 「お前…気をつけろよ?」 「え、何が?」 「何がってお前…Ωなんだから。何かあったら…」 「だったら噛んでくれたらいーじゃん」 番ってくれたら。マチガイなんか、起きないのに。 ちょっとふてくされたように下を向くと、その顔に手のひらがやってくる。 「っつ!」 さわさわとこすられて、思わず顔を上げる。 「そこ!頭なでなでじゃないのぉ?!」 抗議し終えた唇に、ちょんとキスされる。 「!」 「春が大人になったらな」 じゃ、っと背を向け勝手に立ち去ろうとするその人に、 「ねぇ!大人っていつぅ?」 問いかける。 背中はただ、手を振るだけだった。 「…何だよもう……知らないかんね」 マチガイが起きて俺が、ヘンなヤツと番になっちゃったって。 聖人さん以外のヤツと…… 「ヤだな」 自分で考えといて、すぐその悪夢を打ち消した。 明日から、首になんか……巻こうかな。
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