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『しゅんり……変な名前』
って言われたけどね。父が夏太郎。母が真璃。兄が冬璃で……俺が春璃。
何か兄の〝とうり〟ありきで付けられた感は否めないけど。けど俺は、気に入ってるんだ。気に入ったんだ。あの人が、呼んでくれたから。
『春』
〝しゅん〟だって。短くしてきた。
まるで恋人の、それみたいに。
『ま……聖人、さん』
『聖人でいいよ』
〝まさと〟だって!ぎゃ~~!呼べなぁい!!
『ま……まさ…まさ……』
『お前俺の事〝まさまさ〟って呼ぶ気か』
いや~~っ!そんなん絶対呼べなぁい!!
「…春璃……?ご飯、食べないの?」
母親に心配されるくらい、今の俺は舞い上がっていた。
「た…食べるよ…」
いけない、いけない。
落ち着こう一旦。
まだ始まったばっかだ。浮き足立つな。
けど。けど……
「ごめぇん!やっぱ今日ご飯いいや~ぁ!」
〝まさまさ〟で、頭もお腹も一杯だ。
「ねぇ綿貫?」
「…んあ?」
弁当はいつも、同じΩということで仲良くなったクラスメイトの綿貫渉と食べている。…っていうか、俺が綿貫の席に押しかける。
「綿貫君はさぁ、将来の事……どうお考えで?」
「はぁ?」
細身な癖に大食漢の綿貫は、二個目の弁当をかっこみながら、いつもの〝何言ってんだ?お前〟な目を向けてくる。
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