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それから数か月が経ったある日、ランドセルを背負った舞子ちゃんが一人で店にやってきた。
「お饅頭二つください」
舞子ちゃんの近くにはチヨさんの姿はなく、私は「今日はおばあちゃんと一緒じゃないの?」と尋ねた。
すると、舞子ちゃんはチヨさんのものなのか、小さながま口から小銭を出しながらポロポロと泣き出した。
「おばあちゃんね、この前天国に行っちゃったの。もう会えないの」
それを聞いて驚いた。
前に来た時は、あんなにも元気そうだったし、舞子ちゃんの晴れ着姿を見るまで死ねないと言っていたのに。
私は、すごく悲しい気持ちになった。
「お姉ちゃん、ごめんなさい。お金が足りない」
そう言うと、舞子ちゃんは手に持っていた小銭をすべてトレイの上に広げた。
確かに、饅頭二つを買うには五十円ほど足りなかった。
けれど、私は「いいよ。今日はお姉ちゃんが買ってあげる」と小銭をがま口の中に戻して、饅頭を二つ舞子ちゃんにあげた。
「ありがとう。お姉ちゃん」
舞子ちゃんは私に頭を下げると、そのままお地蔵様のところへ歩いて行った。
そして、お地蔵様の前に饅頭を一つ置くと、両手を合わせて合掌した。
今ではこの商店街を歩く人々ですら、そう気にすることのないお地蔵様。
お供え物は、いつの間にかなくなっている。
きっと通行人の誰かが持って行ってしまうのだろう。
なのに、こんなに小さな子がお地蔵様にお供え物をして、手まで合わせている姿を見て、感慨深く思った。
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