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幸せの頂点
その夜は、とても気分が良かった。
年も明けて、世間のどこか騒がしい空気を感じていたが順調に進んでいる私達の計画に何も影響などなかった。
「楽しそうだね、緒花」
マフラーを半分口に当てた彼の吐息は白く、外が冷え込んでいるのがよくわかる。
「うん!すっごく良さそうなマンションだったじゃん、すごく楽しみ。」
そんな寒さ、全く気にならないくらい緒花の気分は良いもので。
むしろ、恋人と新しく生活を始まる住居が決まり満足してるとあらば気分が良くならないわけない。
「テレビは大きいのがいいな。あと本棚も。ああ、でも寂しいから、実家の抱き枕は持っていくよ?朝は二人とも米派だからトースターはまだ買わなくていいよね」
まだ二ヶ月先だというのに二人の生活に妄想に妄想していた。
こんなにも楽しみなこと、かつてあっただろうか。
あんなに家を出たくないと言っていた私が悲しむくらいには楽しみで溢れている。
寒空の中、半スキップ状態のような足取りでベラベラ喋る私をみて恋人はすかさずツッコミを入れた。
「まだ二ヶ月先だぞ?焦りすぎていざ引越しになった時にヘトヘトになるなよ?」
「その時は誰よりも私が働くから」
「教科書10冊も持てないお前が?」
「うるさいっ」
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