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お通夜が終わり、通夜振る舞いが始まった。
先ほどの重苦しい空気は少し代わり、お酒を少し交えながら高校の友人たちは真也との思い出を語っていた。
私は真也と恋仲の為、いろんな人に挨拶をまわった。
「緒花ちゃん、大丈夫?」
「緒花ちゃん、辛かったね。」
「泣いてもいいんだよ?」
女子にも男子にも、その保護者や、近所の方にも。
みんなに心配された。
心に不安などなかったけど、身体にはサインが出ていたようで、疲れた顔をしていたらしい。
真也に出会うまでは友人などほとんどいなかった。
真也が紹介してくれた友人、真也が挨拶して教えてくれた近所の方。
挨拶をした人すべてが真也のつながりでつながった人だけだった。
高校に入って私達は知り合った。
当時の私は無愛想で、友人もおらず一人で高校生活を過ごしていた。
そこから救ってくれたのが真也である。
当時は付き合ったことによって対立した女子も、今では涙を流して私のことを心配してくれる。
真也は本当に、愛されていたんだなぁ。
ある程度挨拶をすませていると、郁也くんが私に声をかけてきた。
「真也の顔、見てないだろ。」
私の隣に立ち、顔も見ずに横から告げてきたその言葉は、少し気遣っているようにも聞こえた。
「うん。」
私も郁也くんの顔を見ずに返事をした。
郁也くんを見れば、真也を思い出してしまう。
真也ではないけど、本当にそっくりなことから、
うまく顔を見ることができずにいた。
郁也くんも察しているのだろう、こうして横に立ち顔を見ずに声をかけてくれる。
真也と同じように、兄も気遣いがとても上手だ。
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