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真也…起きてよ。
もう十分寝たでしょ、お願いだから、起きてよ。
また、私の名前、呼んでよ。
緒花って、呼んでよ……!ねぇ…! 」
真也の姿を見ると、目の斜め上に傷があった。
事故にあったときに傷ついたのだろう。
棺桶に入っているため、身体がどうなっているかはわからない。
「真也…真也、真也……真也がいないのに、私どうしたらいいの?わかんないよぉ…嫌だよぉ…嫌だよ嫌だよ…起きてよぉ………また緒花って…緒花って…」
一瞬、ほおに誰かが触ったような気がした。
風が吹いただけでかもしれない、気のせいかもしれない。
それでも愛する故人を前にした私には、真也が触れてくれた、としか考えられなかった。
「よかった……真也、ここにいるじゃん…」
なんだか眠くなってきてしまった。
明日は水曜日。明後日になれば真也とのデートの日だ。
美味しいスイーツを食べて、他愛もない話をして、プレゼントをするんだ。 夜は真也の部屋に行こう。
いっぱいいっぱい、真也に好きって言うんだ。
「真也……おやすみ…」
私は棺桶の前にぐったりと倒れ、暖かな春の陽気と風を感じながら、芝生の上で寝た。
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