22人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
「真也がね、事故で死んじゃう夢だった…」
「………」
その一言だけいうと、真也は目を見開き、固まった。
「永子さんも渉さんも、私のお母さんも泣いてて…
お葬式のシーンまであってさ、本当に怖かった」
とても重い夢の話だったから、私は苦笑いを浮かべ暗い雰囲気になるのを避けた。
「嫌な話かもだけど夢の中で棺に入ってる真也の顔、相変わらずかっこよくてさ、びっくりしたし、惚れ直しちゃった。 本当に、夢でよかったよ」
真也は一向に何も返答しようとしない、それどころか、さっきよりも表情が暗くなってるような気がした。
夢の話なのに、まるで現実にあったかのような顔。
どうしてそんな顔するの。
「ゆ、夢ってさ、人に話すと正夢じゃなくなるらしいよ?だから、そんなに落ち込まなくても」
「緒花。」
私の話を遮り真面目なトーンで名前を呼ばれた。
ビックリした。
顔も真剣というか、少し怖いというか…
私をじっと見つめてきてくるものだから、
目を逸らしてしまった。
「泣いてる」
真也は指をそっと伸ばし、私の涙を拭き取った。
私は話している途中で静かに涙を流していた。
自分では全く気づかなかった。
「あれ、な…んでかなぁ…」
真也の表情は、心配そうに私を見つめながらもどこか申し訳なさそうな顔をしていた。
その顔をみると夢の話をしてるのに、本当に現実にあったんじゃないかと思えてきた。
尚更それが私の涙を誘う。
目の前にいるのは真也?
真也は、死んじゃったの?
じゃあこの前にいる人は誰?
最初のコメントを投稿しよう!