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わからなくなってきた。
真也が生きてるのが現実なのか、
真也が生きてるのが夢なのか、
夢にしてはすごくリアルだったし、何をしたかも鮮明におぼえてる。
郁也くんと警察と医師と話して、第一発見にも連絡を入れた。アルバイトもしてた。
それが夢だったとして、私は真也と会えなかった4日間は…
一体、何をしていた?
みるみるうちに自分の体温が奪われていく感覚に囚われた。それは夢ではなく、現実に起こったことだという真実が私に襲いかかってきた。
もし、真也が死んだのが現実だとしたらすべての夢の内容とこうしている現実の時系列がすべて当てはまる。
あのお通夜のシーンは、本物の…真也?
「あっ…あぁ…ぅ…」
真実が身体を侵食すればする程、私の今までの夢という幻想が涙に変わってボロボロ出てきた。
抑えるどころの話ではない、どうにもならない感情が言葉として成立しない掠れた声で溢れてくる。
この部屋は、誰の部屋?
この匂いは、誰の匂い?
この家具は、誰のもの?
この植物は、誰の植物?
目の前にいるのは、誰?
その人は、真実に侵食されて心も身体もなくなってしまいそうな小さな身体を優しく抱きしめ包み込んでくれた。
温かい。
そして、どこかで抱きしめてくれたことがあるのような、そんな気がした。
私は泣きじゃくった顔をあげ、その人の顔を見た。
その人は、真也にとても似ていた。
その姿はあまりにもかっこよくて、
私よりもサラサラな黒髪、
少し下まつげが長くて、
男性特有のがっしりした骨が皮膚越しに見えて。
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