22人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
部屋に沈黙が続いた。
何も、何も言えなかった。
郁也くんは目の前でボロボロと泣いていた。
私もボロボロと泣いていた。
床に涙の落ちる音がポタポタと響いている。
「お前より15年も長くいるんだよ…母さんの腹の中にいた時からずっと一緒だったんだよ……お前だけの真也じゃねぇ…俺にとっても、真也が……」
震える声で話していた。
既に肩を持つ郁也くんの手の力は抜け、目の前に座り込んでしまった。
私だけが辛いんじゃない。
彼も、永子さんも、渉さんも。
真也は私だけの唯一ではないのだ。
「ごめんなさい…」
謝罪の言葉しか出なかった。
座り込んでしまった郁也くんを強く抱きしめた。
私よりも身体は大きいのに、抱きしめると子供のように小さいように思えた。
二人して泣いていた。
何度泣けばいいんだろう。
何度後悔すればいいんだろう。
大切な人を亡くすということに対しての向き合い方は、とても難しい。
こうやって傷を舐め合って生きていくしかないのか。
最初のコメントを投稿しよう!