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空いた時間でお母さんからのチャットを確認した。
今は郁也くんの家にいて、明日には家に帰ると返信。お母さんにも随分と迷惑をかけてしまった。
郁也くんはお風呂から上がると、テレビの前の小さなソファに座った。
「えっと…まず通夜の時のことだな。通夜振る舞いの時に、俺が真也に会ってくるように石見に行ったんだ。一人で真也に会いに行って、なかなか戻ってこないから俺が確認しに行ったら棺の前でお前泣きながら寝てた」
寝ているだけだったから病院には連れて行かずに、そのまま郁也くんが車で家に私を連れて行ったという。
そのまま郁也くんは話を続けようとしたが、少し気まずそうな顔をした。昨晩の出来事を言いたくないのであろう。
昨晩の記憶は曖昧であるが、覚えているには覚えていた。だから私は気にせず話してと彼をフォローした。
「昨日の夜…石見は多分、真也が死んだことを夢だと思ってたらしい。目の前にいるのは俺なのに、ずっと真也勘違いしてて…それで……そのまま…
俺は真也を演じて、お前を抱いた……」
ここが盲点だ。
私はずっと郁也を真也と勘違いしていた。
あの夜は夢心地気分で、不安から逃れたい一心で目の前の郁也くんに縋って身体を求めてしまった。
双子の兄という嘘につけ込んだ盲点。
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