幸せの頂点

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駅から家までの道は一人で歩くとこの時期は寒く余計に距離を感じる。 恋人と歩くだけでこんなにも寒さを感じず、かつ距離も短く感じてしまうのは何故なんだろう。 もう少しだけ、一緒にいたい。 そんな気持ちがいつもこの道を二人で歩いてると思ってしまう。 「じゃ、あったかくして寝ろよ」 「うん、今日はありがとう。またね。」 家の前で短い会話を交わすと、惜しむことはあったが恋人に今日の別れを告げた。 明日になれば彼は朝から講義で、私はアルバイトが待っている。 純粋なカップルのように前面的に別れを惜しむことはしない、少しドライかもしれないが逆に私達は少し大人びてるんだと思う。 裕福な家庭ではなかった。物心ついた頃に父は家を出て行った。原因はよくあることかもしれないが、母への暴力や、賭博に溶かしていた金の問題。 そんな中、女手一つで私を育ててくれた母には頭が上がらない。少しでも負担を減らすべく、勉学とともにアルバイトにも力を注いだ。 アルバイトをしていたからこそ、彼と交際できたといっても過言ではない。 恋人中心に生活を回せる程、私にも彼にも大きな余裕はなかった。お互いの価値観が似ていたのか、徐々に似ていったのか…だからこそこんなに続いているのかもしれない。 帰宅すると共に、まだ帰らぬ母への夕食を作った。 それが終わると私はすぐさまお風呂に入り湯船に浸かる。 そんな中、考えていたのは木曜のことだ。 何をするのか、どこに行くのか、なにも話してこなかったし、私も聞かなかった。 深い意味はない。そのせいか、木曜はなにをしようかそれにも思いが膨らんだ。 気になっていたお店に行こうか、本屋に付き合ってもらおうか、でも彼から誘ってくれたからお任せするのもいい、湯船で泡をブクブクさせながら、ポカポカ温まっていく気持ちで考えた。 そういえば、誕生日近いっけ。 彼の誕生日は二週間後であるが、おそらく木曜を逃してしまえばまた会えなくてなってしまうかもしれない。 盲点だった…引越しのことばかりで、恋人の誕生日の準備をしていなかった。誕生日もバイトを入れてしまっているかもしれない…そう思うとなおさら木曜にプレゼントは用意しないとと思った。
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