幸せの頂点

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ゆっくり考えようと思っていたが、物件探しで今日はあちこちを見学してまわったのだ。 気分も高揚していたことで紛れていたが、身体がとても疲れている。 お風呂から出ると、髪の毛を乾かして彼に連絡を入れてから眠りにつこうと思った。 ベッドに倒れスマホを手に取るが、ブルースクリーンが眩しい。目を半開きにしながら文字を打とうたが、打ち切る前に、送信する前に、夢の中へと溺れていった。 夢に彼が出てきた。 そこは入居する予定の家の中で、大きいテレビに大きい本棚、まさに私がさっき妄想していた通りの配置手で置かれている。 ベランダの戸が開いており、春の柔らかな日差しと風がカーテンをなびかせて入り込んでいた。 テレビの前のソファには、本を読みながらコーヒーを飲む彼がいた。 その姿はあまりにもかっこよくて、 私よりもサラサラな黒髪、 少し下まつげが長くて、 唇の斜め下にホクロがあって、 男性特有のがっしりした骨が皮膚越しに見えて。 「緒花。」 中音域の優しい声でその名前を呼ばれると、 初めて声をかけてくれた時のこと、 初めて名前で呼ばれた時のこと、 初めて二人で出かけた時のこと、 たくさんのことを思い出した。 私はソファに座る彼に向かって優しく声をかけようと 「緒花!!!!緒花!!!!」 プツンとその景色は切れて、真っ暗な現実に変わった。 大声で起こされたのだ。 最初は何があったかわからず、いきなり起こされたことにビックリした。 私の起こしたのは母親。 大声で私に呼びかけるとともに、布団を剥いで、私の身体を思いっきり揺すっていた。 「お…お母さん…やめて……どうしたの」 せっかくの睡眠を邪魔されて、相手が母親でも少し機嫌が悪くなった。半分寝ぼけながらも、母親に起きていることを証明し、なにをそんなに起こしてまで伝えたいことがあるのか聞いた。 電気も付いてない部屋の中で、半分しか開いてない目で母親を見ると、なんだか泣いているように見えた。 暗くてよく見えないし、少し視界がボヤけているから尚更、本当に泣いていたのかわからなかった。 「いい? 落ち着いて聞いてね?」 私の両肩に震える手を置いて、震える声で、 覚悟を決めたかのように、信じられない言葉を口にした。
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