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「父さん、母さん!」
深夜の病院、人様に迷惑にならない程度の声で呼びかけてきた青年がいた。
「郁也、こんな遅くにごめんね」
「そんなのは気にすんな。真也は?」
「ICUに入ってるわ。とても危険な状態よ…」
二葉 郁也。 彼の双子の兄だった。
一卵性双生児であり、もちろん身長、顔立ち、声、全てが彼そのものに見える。
少し違うとすれば、兄の方がガサツというか、
逞しい。
彼は繊細で、スマートなイメージだ。
「そうか……真也…」
兄も何かできたことはなかったのだろうかと、唇を噛んでいた。
こんな空気、味わったことはもちろんない。
少し頭が痛くなってきた気がする。
私は椅子に座った。
「緒花。」
夢の中で優しく声をかける彼の声をまた思い出した。
真也、今どこにいるの。
どんな景色が見える?真っ暗?真っ白?
私はね、二人の家にいて、目の前で真也がコーヒー飲んでるよ。
なんて。
届くはずのない思いを真也に届けた。
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