幸せの頂点

7/7
前へ
/75ページ
次へ
「父さん、母さん!」 深夜の病院、人様に迷惑にならない程度の声で呼びかけてきた青年がいた。 「郁也、こんな遅くにごめんね」 「そんなのは気にすんな。真也は?」 「ICUに入ってるわ。とても危険な状態よ…」 二葉 郁也。 彼の双子の兄だった。 一卵性双生児であり、もちろん身長、顔立ち、声、全てが彼そのものに見える。 少し違うとすれば、兄の方がガサツというか、 逞しい。 彼は繊細で、スマートなイメージだ。 「そうか……真也…」 兄も何かできたことはなかったのだろうかと、唇を噛んでいた。 こんな空気、味わったことはもちろんない。 少し頭が痛くなってきた気がする。 私は椅子に座った。 「緒花。」 夢の中で優しく声をかける彼の声をまた思い出した。 真也、今どこにいるの。 どんな景色が見える?真っ暗?真っ白? 私はね、二人の家にいて、目の前で真也がコーヒー飲んでるよ。 なんて。 届くはずのない思いを真也に届けた。
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加