永遠の別れ

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翌日の朝、真也は亡くなった。 事故の原因だが、信号無視をしたタクシーが真也を轢いた。轢き逃げだったらしい。 もちろんそのタクシー運転手は現行犯逮捕。 第一発見者は目の前で真也が轢かれるのを目撃していた。すぐに救急車を呼び、ナンバープレートまでも覚えて警察にも連絡してくれていた。 すでに真也はこの時多量の出血で意識などとうになかった。時間的には、私がお風呂に入ってあれこれ考えている時。 信号無視したあげく、20代なりたての男性を轢き逃げをしたタクシーだ。ニュースにも取り上げられていた。 亡くなる前、不安の芽を強引に引っこ抜いた。 母親も、二葉家も、朝になるまでずっとICUの前で真也が落ち着くのを待っていた。 とても長い夜だったと思う。頭で必死に考えたのは不安な気持ちを拭うべく、なるべくいつもの生活のことを考えていた。明日のアルバイトのこと、課題のこと。 なるべく真也のことを思い出さないように。 思い出すと不安で押しつぶされそうになる。 私がそうなってしまったら、この状況で誰が冷静に動けるのだろうか。 真也の恋人として、冷静にならなくてはと思った。 医師から文也が亡くなったことを伝えられると、冷静でいられたのは私とやはり郁也くんだけだった。 母親同士はもちろん泣きに泣き、渉さんも涙を堪えずにはいられなかった。 私と郁也くんで、3人の介抱をし、医師や警察からの詳しい話を聞いた。 轢き逃げの話を聞いた時、隣で郁也くんがやり場のない怒りを示していた。私も怒りという感情までは至らなかったが、人としてどうかしている、とは思っていた。
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